カズキ、10年愛〜不良のあなたに恋をして〜前編
-遅刻して行った塾が終わったのは、日も傾く夕方。

カズキが来なくなった、帰り道。

すこしは慣れたつもりではいたのに…。



手紙をもらってしまったせいかな?


訳もなく涙がこぼれてくるよ。



ただ、恋しくて…。




せつなくて…。





ただ、カズキの声が、

聞きたくて…。





こんなに、つらいなら。


出会わなければ、よかったのにって…。






思う事が増えてきた。


しっかりしろ!

私は、小さく頭をふった。






♪♪♪

携帯電話がポケットの中で震える。

携帯を開いて確認。




着信:シュン


シュンさんだ!

どうしたんだろ?



「はい!舞です」


『舞ちゃんか?
気晴らしにちょっと、ドライブ行かない?話したい事もあるしさ。』

「わかりました。」

『で?何処にいるの?』

「シュンさんにナンパされた場所です。」

『へっ!?』



いたずらっぽく言う私の答に、しばし考えたような沈黙が流れた。



『わかった!』


そう一言残し電話を切った。

すると…。

5分もしないうちに、引く煩く唸る、黒ずくしで、雪が降ったら除雪してしまうようなぐらいの、低いペタペタの車が到着。



クラクションが2回短く鳴った。

スモーク硝子ごしから、シュンさんは、(乗れ!)と言うジェスチャーをしている。

外から私はこくりと頷くと、助手席のドアを開けて、スルリと滑り込むように座った。


「お邪魔します」

「おう!久しぶり。」




そういったシュンさんは、加えタバコをしていて、ド派手な模様のパープルのシャツに、黒色のスボンをはいている。


車内はいつも、耳が痛くなるほどの音楽と、甘いフルーツの香の芳香剤が充満していた。

しかし、今日に限っては音楽が控え目で会話が出来やすくなっているみたい。

車は、低い唸り音を立てながら走りだした。




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