H! SCHOOL LOVE
「小原さん」
「はい」
「美術部に入らないの?」
「はい」
「絵を描くのが好きでしょう?」
「大好きですよ。
だから、お昼休みに後好先生から美術室の鍵を借りて、絵を描いてるんじゃないですか」
「そうね。大好きなのに…美術部には入らないの?」
「入りません」
「どうして?」
「ひがし大に入らないといけないので。
ひがし大に入って、大企業に就職しないといけないので」
「お母さんのため?
ごめんなさい…。あなたの担任の藤並先生から聞いたの。
お母さんと二人暮らしなそうね」
「そうですけど、別にお金に困っているわけじゃありません。
実際、私はバイトなんかしてませんし」
「そうね。お母さんを楽させてあげたいというより、安心させてあげたいのよね? 心配かけたくないのよね?」
「後好先生…。
安心させてあげたいんじゃない。安心したいんです。
心配かけたくないんじゃない。心配したくないんです。自分のためですよ」
< 11 / 136 >

この作品をシェア

pagetop