チョコレート・ウォーズ
ドキドキ。自分のものだか、陸斗のものだかわからない心拍数の早い心臓の音が耳に聞こえてくる。

ギュ、っと一度強く抱きしめられたと思ったら、名残惜しそうに陸斗の腕が離れていき、代わりにふたりの視線が交わった。

「改めて言わしてくれ。俺は、莉子のことが好きだ」

「私も大好きだよ、りっくん」

ニッコリ笑い、莉子が用意したチョコレートの箱を差し出すと、陸斗が意地悪な笑顔を向けた。

「今年は、去年までとは違う気持ちでくれてるって思っていいんだよな?」

「もちろん。ちゃんと、好きな人に渡すって思って選んだんだよ」

「っ。ああ、もう、なんで莉子、お前風邪引いてんだよっ!」

「え?」

「……今、莉子にすっげーキスしたい気分」

「り、りっくん!?」

陸斗の爆弾発言に、莉子の顔が真っ赤に染まる。

「マスクなかったら襲うところだぞ。あーあ、ホント俺って偉いなあ」

「……」

「なーんて。冗談だよ。俺、莉子を待つのなんて慣れてるから」

莉子の髪の毛をクルクルと指でいじりながら、陸斗は微笑む。

「莉子が俺のこと、ちゃんと男として意識してくれるまでずっと待ってたんだ。今日一日くらいの我慢、どうってことないよ」

「一体いつからその……、りっくんは私のことを、女の子として好きって思ってくれてたの?」

「小学五年くらいからかな」

「そ、そうだったの? ごめん。私、本当に気づかなくて」

自分のあまりの鈍感さに情けなくなり、莉子は肩を落とす。

陸斗は五年近く、ずっと莉子のことを思い続け、見守り続けてくれていたのだ。

「いいよ、別に。高校生のうちには莉子に告白しようと思ってたし」

「なんで、高校生のうちに、なの?」

「制服デートとか、したくないか?」

「したい。してみたい!」

まるで立候補するように右手を真っ直ぐ上げてしまい、莉子は少し恥ずかしくなり思わず手を下ろす。

「だろ? それにさ、莉子の両親も、俺の親もしたことないんだせ、制服デート」

「りっくんのとこも?」

莉子の両親が制服デートをしていないことは、先日の雛子の話からわかっていた。

ふたりが付き合いだしたのは大人になってからと教えてもらっていたからだ。

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