チョコレート・ウォーズ
「莉子」
「ん?」
「俺は、莉子のことが好きだよ」
陸斗のその言葉に、莉子は満面の笑みでうなずく。
「うん。私もりっくんのこと好きだよ」
その瞬間、陸斗の顔がくしゃりと歪む。
「違うんだよ……」
「え? 何が?」
「莉子の好きと、俺の好きは違うんだよっ!」
ドンッ、と陸斗が横の机を叩く音が教室に響き、その大きな音に莉子が肩を震わせる。
驚いた表情の莉子。その瞳の中に見える少しばかりの恐怖。
「……ごめん」
陸斗はそう言って莉子から顔を逸らし、教室を飛び出していったのだった。
「そういうことがあったのね……」
莉子から話を聞いた杏奈は、深いため息をついた。
目の前の親友は、いつも素直で可愛くて。だけど、少々幼いところもあって、自分の周りで起こっている恋愛沙汰にはめっぽう弱い。
そんな莉子のことを、陸斗がとても大事に思っていることも知っていたし、莉子が陸斗の気持ちに気づいていないこともわかっていた。
ずいぶん陸斗は我慢してるなあ、頑張っているなあとは思っていたけれど、まさかこのタイミングで爆発させてしまうとは。
このふたりの関係を暖かく見守っていた杏奈としては、この出来事をきっかけにどうにか進展してほしいと願っていて、さてどうしたものかと天井を見上げる。
「杏ちゃん。りっくんの言ってた『好き』の違いって何なんだろう」
「え?」
「なんで、りっくんの好きと私の好きは違うの? 好きに違いってあるの?」
そうか。まずはこの親友が『好き』に気づかないと話が進まないのか。
莉子を動揺させないように、杏奈はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「莉子の好きな人って、陸斗くん以外に誰がいる?」
「そりゃあ、家族でしょ。りっくんパパやママも、黒川のおじさまだって大好きだし。それにもちろん、杏ちゃんも!」
「そうよね。私だって家族のことは好きだし、莉子のことだって大好きよ。じゃあ、莉子。例えば、莉子が大好きな弟くんに彼女が出来たって聞いたらどう思う?」
「可愛い子ならいいなって思うよ。応援したいし、彼女とも仲良くなりたい」
「私に彼氏が出来たら?」
「ん?」
「俺は、莉子のことが好きだよ」
陸斗のその言葉に、莉子は満面の笑みでうなずく。
「うん。私もりっくんのこと好きだよ」
その瞬間、陸斗の顔がくしゃりと歪む。
「違うんだよ……」
「え? 何が?」
「莉子の好きと、俺の好きは違うんだよっ!」
ドンッ、と陸斗が横の机を叩く音が教室に響き、その大きな音に莉子が肩を震わせる。
驚いた表情の莉子。その瞳の中に見える少しばかりの恐怖。
「……ごめん」
陸斗はそう言って莉子から顔を逸らし、教室を飛び出していったのだった。
「そういうことがあったのね……」
莉子から話を聞いた杏奈は、深いため息をついた。
目の前の親友は、いつも素直で可愛くて。だけど、少々幼いところもあって、自分の周りで起こっている恋愛沙汰にはめっぽう弱い。
そんな莉子のことを、陸斗がとても大事に思っていることも知っていたし、莉子が陸斗の気持ちに気づいていないこともわかっていた。
ずいぶん陸斗は我慢してるなあ、頑張っているなあとは思っていたけれど、まさかこのタイミングで爆発させてしまうとは。
このふたりの関係を暖かく見守っていた杏奈としては、この出来事をきっかけにどうにか進展してほしいと願っていて、さてどうしたものかと天井を見上げる。
「杏ちゃん。りっくんの言ってた『好き』の違いって何なんだろう」
「え?」
「なんで、りっくんの好きと私の好きは違うの? 好きに違いってあるの?」
そうか。まずはこの親友が『好き』に気づかないと話が進まないのか。
莉子を動揺させないように、杏奈はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「莉子の好きな人って、陸斗くん以外に誰がいる?」
「そりゃあ、家族でしょ。りっくんパパやママも、黒川のおじさまだって大好きだし。それにもちろん、杏ちゃんも!」
「そうよね。私だって家族のことは好きだし、莉子のことだって大好きよ。じゃあ、莉子。例えば、莉子が大好きな弟くんに彼女が出来たって聞いたらどう思う?」
「可愛い子ならいいなって思うよ。応援したいし、彼女とも仲良くなりたい」
「私に彼氏が出来たら?」