チョコレート・ウォーズ
もうひとつの戦い
莉子に会いに行く、と終業のチャイムと同時に教室を飛び出す陸斗を半ば呆然と見送った杏奈に、幸弘から声が掛かった。
「高梨。今から時間あるか?」
「うん。今日は莉子とご飯に行く約束してたんだけど、それもなくなっちゃったし」
両親がデート、弟がスキー研修で不在の莉子に付き合って、今日はふたりで寄り道してご飯でも食べようと約束をしていた。
「でも、きっと陸斗くんに取られるだろうから、予定はないも一緒だとは思ってたんだけどね」
「甘いな、高梨。あの莉子ちゃんだぜ。絶対『杏ちゃんと約束があるから』って告白直後でもお前優先したに決まってるって」
「それ言われても、私は陸斗くんに預けたわよ」
「そういうヤツだよなあ、お前は」
幸弘に優しく微笑まれ、杏奈の胸がギュ、となった。
杏奈は、この四人の中でひとりだけ、中等部からあるこの学校の、高等部からの外部入学者である。
中学校時代に起きたことが原因で、同じ学校から誰も受験しないような高校を目指したのが理由だ。
誰も受験しないくらいなので、家から学校までの通学時間もとても長く、入学当初はみんなに、「なんでそんな遠くから?」と言われていた。
悪意のない、「なんでこの学校を選んだの?」といった類の質問に、杏奈が困っていた時、助け船を出してくれたのが幸弘だった。
『それだけこの学校に魅力感じたってことじゃねぇの。な?』
思わず杏奈がうなずくと、周りのみんなも納得した顔になり、別の話題へと話が変わっていった。
その後、仲良くなった莉子と、幸弘の友人の陸斗が幼馴染という関係もあり、杏奈を含めた四人で行動することが増え、自然と幸弘について詳しくなっていった。
少し茶色がかったクセのある柔らかい髪の毛は、元々柔らかい空気を醸し出している幸弘を更に優しく見せている。
「ちょっと近寄りがたいクールな感じが魅力」と称される陸斗とは反対に、幸弘は「優しくって話しやすくてかっこいい」と女子たちからの人気も高い。
「高梨。今から時間あるか?」
「うん。今日は莉子とご飯に行く約束してたんだけど、それもなくなっちゃったし」
両親がデート、弟がスキー研修で不在の莉子に付き合って、今日はふたりで寄り道してご飯でも食べようと約束をしていた。
「でも、きっと陸斗くんに取られるだろうから、予定はないも一緒だとは思ってたんだけどね」
「甘いな、高梨。あの莉子ちゃんだぜ。絶対『杏ちゃんと約束があるから』って告白直後でもお前優先したに決まってるって」
「それ言われても、私は陸斗くんに預けたわよ」
「そういうヤツだよなあ、お前は」
幸弘に優しく微笑まれ、杏奈の胸がギュ、となった。
杏奈は、この四人の中でひとりだけ、中等部からあるこの学校の、高等部からの外部入学者である。
中学校時代に起きたことが原因で、同じ学校から誰も受験しないような高校を目指したのが理由だ。
誰も受験しないくらいなので、家から学校までの通学時間もとても長く、入学当初はみんなに、「なんでそんな遠くから?」と言われていた。
悪意のない、「なんでこの学校を選んだの?」といった類の質問に、杏奈が困っていた時、助け船を出してくれたのが幸弘だった。
『それだけこの学校に魅力感じたってことじゃねぇの。な?』
思わず杏奈がうなずくと、周りのみんなも納得した顔になり、別の話題へと話が変わっていった。
その後、仲良くなった莉子と、幸弘の友人の陸斗が幼馴染という関係もあり、杏奈を含めた四人で行動することが増え、自然と幸弘について詳しくなっていった。
少し茶色がかったクセのある柔らかい髪の毛は、元々柔らかい空気を醸し出している幸弘を更に優しく見せている。
「ちょっと近寄りがたいクールな感じが魅力」と称される陸斗とは反対に、幸弘は「優しくって話しやすくてかっこいい」と女子たちからの人気も高い。