チョコレート・ウォーズ
どうやら杏奈が、数か月前に告白されて断った男子生徒のことを四人の中でもリーダー格の友人が気に入っていたことが、彼女たちの杏奈に対する不満を大きくしたようだった。
更に追い打ちを掛けたのは、依頼を受けていた男子生徒が、謝礼を受けることでそれを了承したことだった。
ショックを受けた杏奈は、それから数日、学校を休んだ。
その数日で、杏奈が悩み、考えた上で出した結論。
それは、友達なんてもう作らない。恋もしない。そして、この中学から誰も進学しない高校を受験する。
それから心に鍵を掛けた杏奈は、強くなった。
男子生徒はヘラヘラと告白してきたが、やんわりと断った。
友人たちは何もなかったかのようにいつものように接してきたので、杏奈も変わらず接することに努めた。
変わったのは、本音は絶対明かさず、仮面をかぶって過ごすこと。
志望校も告げず、ひたすらに勉強をし、今の高校に合格した。
そして杏奈は、携帯電話を解約し、中学時代の交友関係を自分の中から排除したのだった。
*
「それで、遠いのにうちの高校入ってきたのか」
幸弘の言葉に杏奈は小さく頷く。
まだ、杏奈の肩が震えている。そのことが、中学時代の出来事が杏奈にとってとても衝撃的なことだったかを物語っている気がして、幸弘の心にズキリと刺さった。
「ホントは誰とも仲良くならずにそのまま独りでいようと思ってた。でも、莉子が話しかけてくれて、この子なら信じられると思って、救われたの」
「……莉子ちゃんだけ?」
「え?」
思わず口をついて出た。俯いていた杏奈が顔を上げ、幸弘の瞳とぶつかる。
「高梨を救えたのは、莉子ちゃんだけか? 俺は、お前のこと、救えてないのか?」
「そんなことないよ。さっきもありがとう、あの場から救ってくれて。でもさ、彼氏のフリまでしてくれなくてもよかったのに」
自嘲的に笑う杏奈を見て、かぶせるように声を上げる。
「フリじゃない」
「何言ってるの。フリでしょ。だって実際私と赤瀬は付き合ってなんかないんだし」
「でも俺は、高梨と付き合いたいと思ってる」
杏奈の目がいつもの倍くらい見開き、動きが止まる。
ずっと言いたかった気持ち。一度口に出してしまうと止まらない。
「俺は、高梨のことが好きだ」
更に追い打ちを掛けたのは、依頼を受けていた男子生徒が、謝礼を受けることでそれを了承したことだった。
ショックを受けた杏奈は、それから数日、学校を休んだ。
その数日で、杏奈が悩み、考えた上で出した結論。
それは、友達なんてもう作らない。恋もしない。そして、この中学から誰も進学しない高校を受験する。
それから心に鍵を掛けた杏奈は、強くなった。
男子生徒はヘラヘラと告白してきたが、やんわりと断った。
友人たちは何もなかったかのようにいつものように接してきたので、杏奈も変わらず接することに努めた。
変わったのは、本音は絶対明かさず、仮面をかぶって過ごすこと。
志望校も告げず、ひたすらに勉強をし、今の高校に合格した。
そして杏奈は、携帯電話を解約し、中学時代の交友関係を自分の中から排除したのだった。
*
「それで、遠いのにうちの高校入ってきたのか」
幸弘の言葉に杏奈は小さく頷く。
まだ、杏奈の肩が震えている。そのことが、中学時代の出来事が杏奈にとってとても衝撃的なことだったかを物語っている気がして、幸弘の心にズキリと刺さった。
「ホントは誰とも仲良くならずにそのまま独りでいようと思ってた。でも、莉子が話しかけてくれて、この子なら信じられると思って、救われたの」
「……莉子ちゃんだけ?」
「え?」
思わず口をついて出た。俯いていた杏奈が顔を上げ、幸弘の瞳とぶつかる。
「高梨を救えたのは、莉子ちゃんだけか? 俺は、お前のこと、救えてないのか?」
「そんなことないよ。さっきもありがとう、あの場から救ってくれて。でもさ、彼氏のフリまでしてくれなくてもよかったのに」
自嘲的に笑う杏奈を見て、かぶせるように声を上げる。
「フリじゃない」
「何言ってるの。フリでしょ。だって実際私と赤瀬は付き合ってなんかないんだし」
「でも俺は、高梨と付き合いたいと思ってる」
杏奈の目がいつもの倍くらい見開き、動きが止まる。
ずっと言いたかった気持ち。一度口に出してしまうと止まらない。
「俺は、高梨のことが好きだ」