チョコレート・ウォーズ
「杏ちゃんに? もちろん大歓迎。だけど、杏ちゃんを幸せにしてくれる人じゃないと許さないけどね」

「じゃあ、陸斗くんに彼女が出来たら?」

「りっくんに、彼女……?」

「それで、その彼女が陸斗くんに『莉子ちゃんと仲良くしないで』って言うから、陸斗くんは莉子と遊んだりしてくれなくなっちゃうの。どう思う?」

今まで朗らかに笑っていた莉子の顔から、笑顔が消えた。

「い、一緒に帰ったりとか、お買い物行ったりとかは?」

「もちろん無理でしょうね。きっと嫉妬深い彼女なら誤解しちゃうもの、私以外の女の子とデートしてるなんて、って」

「でも、パパやママと一緒にりっくんのお家に行ったりとかするのは大丈夫だよね?」

「だけど、陸斗くんはその日、彼女とデートで家にいなかったりとかするんじゃない?」

杏奈の容赦ない言葉に、莉子は俯き、無言になった。握りしめた両手が震えている。

その両手に、ポツ、ポツ、と涙の粒が落ちていく。

「嫌だ。そんなの、嫌だ……」

「ね、好きにも色々あるでしょ?」

杏奈が莉子の頭を優しく撫でると、莉子がゆっくり顔を上げた。

「ねぇ、莉子。一週間後のバレンタイン、自分の気持ちにちゃんと向き合って渡してみない?」

「私の気持ち?」

「そ。毎年渡してるから、じゃなくて。どういう気持ちで渡したいのか、ちゃんと考えて渡してみれば?」

「……そうだね。ちゃんと考えてみる。ありがとう、杏ちゃん」

「いえいえ。どういたしまして。さ、じゃあ、帰ろっか」

「うん」

カバンを持って立ち上がり、ふたりは教室を後にした。


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