チョコレート・ウォーズ




「おかえり、莉子ちゃん」

「ただいま」

杏奈と別れ、莉子が家に戻ると、母親の雛子が台所で夕飯の支度をしているところだった。

「今日はビーフシチューよ」

「わあ。ママのビーフシチュー、大好き」

莉子の言葉に雛子は嬉しそうに微笑む。

台所に立つ母の後ろ姿を見つめながら、莉子は杏奈との会話を思い出す。

陸斗に対する『好き』って、一体どういうことなんだろう。

今までも、陸斗のことは大好きだった。

そしてこれからも、陸斗が大事な人でいることには間違いない。

でもそれは、友達として? それとも……。

「莉子ちゃん?」

気づくと、目の前に雛子が立っていた。

「どうしたの、ぼーっとしちゃって。熱でもあるの?」

「ううん、そんなことないよ。ちょっと考えごと」

「そう? ならいいんだけど」

「あ、あのね。ママ」

「なあに?」

「ママとパパって、幼馴染、だったんだよね?」

雛子がフワリ、と微笑む。

「そうよ。慎くんのお家がお隣で、ずっと一緒だったの」

「……ママはパパのこと、小さい頃から好きだった?」

「ええ、ずっと大好きだったわよ」

「どんな風に?」

「どんな、って……。もしかして、りっくんに彼女でも出来た?」

思いがけない雛子の切り返しに、莉子はブンブン首を横に振る。

「よかったぁ。莉子ちゃんもママと同じような思いをしたのかと思って、心配しちゃったじゃない」

「ママと同じって?」

「莉子ちゃんから質問も来たことだし、今日はうちの男性陣はちょっと帰りが遅いから、話しちゃおうかな」

そうやって茶目っ気たっぷりに笑って、雛子は莉子の肩を押してリビングのソファへと引っ張っていく。

「話って?」

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