チョコレート・ウォーズ
「私が、パパを好きになったきっかけ」
確かに、莉子はふたりの馴れ初めを聞いたことはなかった。
家が隣同士で幼馴染で、父親の慎吾が芸能界に入った中学三年生までは、ずっと一緒だったということまでは聞いていたけれど、結婚に至った経緯は特に聞いたことがなかった気がする。
「莉子ちゃんとりっくんのようにね、私たちもずーっと一緒だったの。私は慎くんのこと大好きだったし、でもそれは、家族のことと同じように好きだとしか思ってなかったの。でもね」
「でも?」
「中学二年生の時に、慎くんに初めて彼女が出来たの」
「え? パパ、ママ以外の人と付き合ってたの?」
莉子は思わず目を丸くする。
未だにお互いを『雛』『慎くん』と名前で呼び合うくらい仲のいい両親。
そんな両親だから、ずっと両思いだと思っていた莉子にとっては、少し衝撃の話だった。
「だってお互い、異性として意識をしたことがなかったんだもの。ずっと当たり前のように一緒にいて、これからもずっとそうだと思っていたから。でもね、その時に思ったの。そっか、私と慎くんは家族じゃないんだ。これから先、慎くんが別の女の子と一緒になって、家族を作っていくこともあるんだって。そう思ったら、すごく悲しくなって、嫌だなあって思って。それで気づいたのよ、私は慎くんのこと、ちゃんと男の子として大好きなんだって」
「それで、ママはどうしたの? パパに気持ちを伝えたの?」
莉子の問いに、雛子は小さく首を横に振った。
「勇気がなくて、伝えられなかった。幼馴染の関係のままでも、ずっとそばにいられたらそれでいいって思って」
「でも、ふたりは結婚したんでしょ? どうやって?」
「うん。大人になってね、ママが勇気を出して告白したの。そうしたら、パパも同じ気持ちでね、改めてプロポーズをしてくれて、こうして一緒になることが出来たのよ」
「そうだったんだあ……」
初めて聞く両親の馴れ初め話は、莉子にとっても新鮮だった。
結婚したら、こんな夫婦になりたいな、と思うくらいの理想の両親。
「いいなあ。私もママやパパみたいにずっと仲良しでいたいなあ」
「それは、りっくんと?」
「えっ!?」
何気なくつぶやいた言葉を拾われて、莉子は固まってしまう。
雛子は優しく微笑み、莉子の頭を撫でる。
「……今日ね、りっくんに言われたの。『莉子の好きと俺の好きは違う』って」
「そうだったの……」
確かに、莉子はふたりの馴れ初めを聞いたことはなかった。
家が隣同士で幼馴染で、父親の慎吾が芸能界に入った中学三年生までは、ずっと一緒だったということまでは聞いていたけれど、結婚に至った経緯は特に聞いたことがなかった気がする。
「莉子ちゃんとりっくんのようにね、私たちもずーっと一緒だったの。私は慎くんのこと大好きだったし、でもそれは、家族のことと同じように好きだとしか思ってなかったの。でもね」
「でも?」
「中学二年生の時に、慎くんに初めて彼女が出来たの」
「え? パパ、ママ以外の人と付き合ってたの?」
莉子は思わず目を丸くする。
未だにお互いを『雛』『慎くん』と名前で呼び合うくらい仲のいい両親。
そんな両親だから、ずっと両思いだと思っていた莉子にとっては、少し衝撃の話だった。
「だってお互い、異性として意識をしたことがなかったんだもの。ずっと当たり前のように一緒にいて、これからもずっとそうだと思っていたから。でもね、その時に思ったの。そっか、私と慎くんは家族じゃないんだ。これから先、慎くんが別の女の子と一緒になって、家族を作っていくこともあるんだって。そう思ったら、すごく悲しくなって、嫌だなあって思って。それで気づいたのよ、私は慎くんのこと、ちゃんと男の子として大好きなんだって」
「それで、ママはどうしたの? パパに気持ちを伝えたの?」
莉子の問いに、雛子は小さく首を横に振った。
「勇気がなくて、伝えられなかった。幼馴染の関係のままでも、ずっとそばにいられたらそれでいいって思って」
「でも、ふたりは結婚したんでしょ? どうやって?」
「うん。大人になってね、ママが勇気を出して告白したの。そうしたら、パパも同じ気持ちでね、改めてプロポーズをしてくれて、こうして一緒になることが出来たのよ」
「そうだったんだあ……」
初めて聞く両親の馴れ初め話は、莉子にとっても新鮮だった。
結婚したら、こんな夫婦になりたいな、と思うくらいの理想の両親。
「いいなあ。私もママやパパみたいにずっと仲良しでいたいなあ」
「それは、りっくんと?」
「えっ!?」
何気なくつぶやいた言葉を拾われて、莉子は固まってしまう。
雛子は優しく微笑み、莉子の頭を撫でる。
「……今日ね、りっくんに言われたの。『莉子の好きと俺の好きは違う』って」
「そうだったの……」