チョコレート・ウォーズ
「私、言われたときよくわかんなくて。杏ちゃんに相談したら、りっくんに彼女が出来たらどう思う? って聞かれて。そしたら、すっごく嫌だって思ったの」

「そう。じゃあ、ママと一緒ね」

その言葉に、莉子は微笑んだと思ったら、また少し沈んだ表情を浮かべた。

「でも、りっくんの好きと一緒なのかな?」

「それは、ちゃんとりっくんに確かめてみなさい」

「ママ……」

「不安そうな顔しないの。莉子ちゃんなら勇気を出してちゃんとお話できるわよ。だって、ママにだって出来たんだから」

目の前で拳を握りながら励ましてくれる母親の姿を見ていると、莉子の中で、段々と勇気が湧いてくるのを感じた。

「ママ、私頑張る。りっくんにちゃんと今の自分の気持ちを伝えてみる!」

「その意気よ、莉子ちゃん。あ、でも」

「でも、何?」

「パパにはまだ内緒にしておいてあげてね、拗ねちゃうから」

普段はかっこいい父親だけど、莉子のこととなると過保護な慎吾。

「莉子ちゃんに好きな人ができたなんて知ったら、きっと慎くん発狂しちゃうわ。徐々に知らせていかないと」

「そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ?」

「甘いわ、莉子ちゃん。慎くんはね、莉子ちゃんがお腹の中にいるときから、『女の子だったら嫁にいかせたくない』とか、『彼氏は俺が認めた奴じゃないと許さない』とか言ってたんだから」

「そ、そうなの?」

「そうよー。自分は中学二年生で彼女作ったくせに、何言ってんだか」

その言葉には少し棘があるように莉子には聞こえて、少なからず雛子がヤキモチを妬いていることがわかる。

いつまでたってもヤキモチを妬けるくらいお互いのことを思っている両親が、やはりうらやましい。

「ママ、話聞いてくれてありがとう」

「莉子ちゃんこそ、話してくれてありがとう。ママ、莉子ちゃんと女の子同士の話ができてとってもうれしいわ」
莉子は、母の笑顔を見て、改めて自分の気持ちをきちんと伝えようと決意するのだった。


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