意地悪な彼の溺愛パラドックス
そうこうしているうちに、立ち込める香ばしい匂いがお腹を鳴らし始めたので、スライスしたバナナをつまみ食い。
サラダと目玉焼きとトーストを各々盛りつけ、それからふたつのマグカップにコーヒーを注ぎ、ひとつはミルクと砂糖を三杯ずつ入れる。
くるくるとスプーンを回していると「砂糖入れすぎ」と、あきれた声が聞こえてきた。
「子供かよ」
そう言いながら、背後からフワリと私を抱き込んだ彼の片手がくしゃりと髪をなでる。
初々しい触れ合いに胸は高鳴り、いつか、こんなふうに一緒に住めればいいなという理想を描く。
ただ、苦いのは苦手ですなどと言えば確実にからかわれそうで、私は見栄を張った。
「私、朝は甘めがいいんです」
「ふーん? お嬢様用にリンゴジュースもあるよ」
「お嬢様用?」
思わず、うしろの彼を見上げて疑惑をかける。
クスリと笑い私の肩に顎をのせるので、答えを求めグリグリと背中を押しつけて攻撃すると、ギュッと抱きしめた彼がスマートフォンを片手に言った。
「たまにアイリ預かるんだけど、リンゴジュース好きだからストックしてんの」
「そういえば。アイリちゃんも遼くんが大好きって感じしました」
「だろ? メシ作ってやることもあるんだぞ」
私の目の前でアプリケーションを開き「すごくね? そしてかわいくね?」と自画自賛しながら見せるのは、クオリティーの高すぎるキャラクターごはんの写真。
ゲームセンター店員として熟知しているのもプライドのうち、最新キャラクターを細部まで正確に再現しつつ、絶対においしそうなお子様ランチの数々に感服した。
そして、一緒に写るアイリちゃんがマスコットのようでまたかわいい。
女性の影が二歳児であることに安心した私は現金な奴で、心から彼を褒め称える。
「こんなごはん作れるなんて最高ですよ! アイリちゃんうれしそう」
「おかげさまで、リオのメシより好評」
自慢そうに言う彼にクスクスと肩を揺らし、写真の中のアイリちゃんの笑顔にキュンと胸を鳴らした。
「あんなかわいい子と遊び放題なんていいなぁ。うらやましいです」
彼とのトリッキーな関係性がハッキリした今、子供好きの私としては、心置きなくメロメロしたい気分。
彼も子供好きらしいから、きっとそうなのだろう。
「まぁ、姪っ子くらいはな」
「あれ? 前に大和くんが、遼くんは子供好きだって言ってましたよね?」
彼は首を傾げて、視線を泳がせてから「あれか」と納得して口角を上げた。
「それ、お前のこと」
「私?」
どういう意味かと彼の腕を押しのけて振り向いた私の頬を、彼は人差し指でプニプニとつつく。
「ガキって言われて落ち込んでたお子様に、大和なりのフォロー」
「うそ……」
「お子様にモテモテで困っちゃうぜ」
うれしいような気もするが素直に喜べないのは、完全に子供扱いされている感が否めないからで、私はフンッと鼻を鳴らして頬を膨らませた。
「そうですね! 子供に好かれて面倒見がいい遼くんなら、いいパパになりますね!」
勢いで向う見ずに言ってしまった言葉に、彼は少し伏し目がちになり首を横に振る。
「うーん、俺には無理かも」
「……え?」
それがなぜなのか、どういう意味なのかわからなくて聞き返したのに、彼はかき消すように笑顔を作った。
その笑顔はぎこちなくて違和感になる。
サラダと目玉焼きとトーストを各々盛りつけ、それからふたつのマグカップにコーヒーを注ぎ、ひとつはミルクと砂糖を三杯ずつ入れる。
くるくるとスプーンを回していると「砂糖入れすぎ」と、あきれた声が聞こえてきた。
「子供かよ」
そう言いながら、背後からフワリと私を抱き込んだ彼の片手がくしゃりと髪をなでる。
初々しい触れ合いに胸は高鳴り、いつか、こんなふうに一緒に住めればいいなという理想を描く。
ただ、苦いのは苦手ですなどと言えば確実にからかわれそうで、私は見栄を張った。
「私、朝は甘めがいいんです」
「ふーん? お嬢様用にリンゴジュースもあるよ」
「お嬢様用?」
思わず、うしろの彼を見上げて疑惑をかける。
クスリと笑い私の肩に顎をのせるので、答えを求めグリグリと背中を押しつけて攻撃すると、ギュッと抱きしめた彼がスマートフォンを片手に言った。
「たまにアイリ預かるんだけど、リンゴジュース好きだからストックしてんの」
「そういえば。アイリちゃんも遼くんが大好きって感じしました」
「だろ? メシ作ってやることもあるんだぞ」
私の目の前でアプリケーションを開き「すごくね? そしてかわいくね?」と自画自賛しながら見せるのは、クオリティーの高すぎるキャラクターごはんの写真。
ゲームセンター店員として熟知しているのもプライドのうち、最新キャラクターを細部まで正確に再現しつつ、絶対においしそうなお子様ランチの数々に感服した。
そして、一緒に写るアイリちゃんがマスコットのようでまたかわいい。
女性の影が二歳児であることに安心した私は現金な奴で、心から彼を褒め称える。
「こんなごはん作れるなんて最高ですよ! アイリちゃんうれしそう」
「おかげさまで、リオのメシより好評」
自慢そうに言う彼にクスクスと肩を揺らし、写真の中のアイリちゃんの笑顔にキュンと胸を鳴らした。
「あんなかわいい子と遊び放題なんていいなぁ。うらやましいです」
彼とのトリッキーな関係性がハッキリした今、子供好きの私としては、心置きなくメロメロしたい気分。
彼も子供好きらしいから、きっとそうなのだろう。
「まぁ、姪っ子くらいはな」
「あれ? 前に大和くんが、遼くんは子供好きだって言ってましたよね?」
彼は首を傾げて、視線を泳がせてから「あれか」と納得して口角を上げた。
「それ、お前のこと」
「私?」
どういう意味かと彼の腕を押しのけて振り向いた私の頬を、彼は人差し指でプニプニとつつく。
「ガキって言われて落ち込んでたお子様に、大和なりのフォロー」
「うそ……」
「お子様にモテモテで困っちゃうぜ」
うれしいような気もするが素直に喜べないのは、完全に子供扱いされている感が否めないからで、私はフンッと鼻を鳴らして頬を膨らませた。
「そうですね! 子供に好かれて面倒見がいい遼くんなら、いいパパになりますね!」
勢いで向う見ずに言ってしまった言葉に、彼は少し伏し目がちになり首を横に振る。
「うーん、俺には無理かも」
「……え?」
それがなぜなのか、どういう意味なのかわからなくて聞き返したのに、彼はかき消すように笑顔を作った。
その笑顔はぎこちなくて違和感になる。