桜の季節、またふたりで
ほらっ、とまどかに背中を押されてバックヤードに追いやられた。


ロッカーを開けるとかわいい紙袋が入っていて、ワンピースとミュールが入っていた。


「かわいい・・・」


と、思わずつぶやいてしまうほどだった。


とりあえず着替えてみたけど、普段着ないタイプの服だから、自分がマネキンになったような、どこか不思議な感じだった。


駅に向かう途中で自宅に寄って自分の洋服と靴を置いて、ついでにバッグもリュックから女の子っぽいものに変えた。


電車の中で、竣くん宛のメールを作成したけど、もう斉藤さんと大学祭へ行くことは決まってるんだし、今さら何を書いても仕方ない気がした。


竣くんも、私に本当のことを言ってくれなかったんだから。


それで私も、竣くんに本当のことを言えなくなったんだから。


自分のことを正当化する言い訳ばかり浮かんできて、せつなくなった。


迷ったけど、メールを消して、電車を降りた。


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