桜の季節、またふたりで
最寄り駅に着くまでずっと、大学の話を聞いていた。


斉藤さんは教育学部だけど、サークルを通じて他学部との交流も多いから、文学部のこともよく知っているらしい。


「美春ちゃんの今の実力なら、きっと合格できるよ。


待ってるからな」


「はい、がんばります」


まだ早いから送らなくていいですって断ったのに、斉藤さんは送ってくれた。


しゃべりながら家の近くまで来たとき、見覚えのある車が視界に入ってきた。


あれは、間違いなく、竣くんの車だ。


どうしよう。


斉藤さんと歩いていたら、誤解しないわけない。


でも、もうUターンできない。


その時、運転席のドアが開いて、竣くんが降りてきた。


「美春、どっか行ってたの?」


「竣くん、あのね・・・」


< 109 / 231 >

この作品をシェア

pagetop