桜の季節、またふたりで
高3の冬
9月のあの日から12月の今日までずっと、竣くんとは会えないままだった。


整備工場に行っても、シャッターが閉まっていた。


竣くんの家はそのままだったけど、生活感がまるでなくて、竣くんの体だけ消えてしまったようだった。


ただ、あの日作ったハンバーグは、冷蔵庫からなくなっていた。


食べてくれたのか処分したのかわからないけど、あの日か翌日には竣くんがこの部屋にいたっていう証拠で、それだけが支えだった。


携帯はつながるけど、出てくれなかった。


メールをしても、返事はなかった。


携帯電話があっても、つながることはできないし、相手がどこにいるのかわからない。


もうあきらめよう、って何度も考えたけど、どうしてもできなかった。


竣くんがいなくなって、ぽっかりあいてしまった穴を埋めるように、勉強ばかりした。


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