桜の季節、またふたりで
「美春?」


声をかけてきたのは、お母さんだった。


「お母さん、どうしたの?」


「どうしたのじゃないわよ、美春が倒れたって学校から連絡もらって、病院に来たんじゃない。


病院の先生が、肺炎になりかけてるっておっしゃってたわよ。


勉強、無理してたんじゃない?


今晩は念のため入院しなさいって」


そういえば、1週間くらい前から咳と微熱が続いてた気がする。


「迷惑かけて、ごめんなさい」


「迷惑だなんて思ってないわよ。


少し休みなさい」


「お母さん、携帯とってくれる?」


「いいけど、すぐに寝るのよ」


手続きしてくると言い、お母さんは病室を出ていった。


こんなツラい時に聞きたいのは、竣くんの声だ。


お願い、出て・・・と祈りながら電話した。


でもやっぱり、出てくれなかった。


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