桜の季節、またふたりで
『それはないと思うけどな』


『美春はニブいからなあ。


まあ、いいんじゃない、ごはんくらい食べたって。


きっとおごってくれるよ』



うやむやな気持ちのまま翌日を迎えて、大学構内で斉藤さんに偶然会った。


「美春ちゃん、今日なんか感じ違うな、俺のせい?」


「そうですよ、斉藤さんのせいです」


先週バイト代で買ったばかりのワンピースを着ていた。


「じゃあ、あとで」


よく見たら、斉藤さんもいつも着てるTシャツにジーンズみたいなラフな服装じゃなくて、カッチリしたボタンダウンのシャツにチノパンだった。


お互い、微妙に意識してるような、変な感じだった。



17時少し前に駅に着くと、斉藤さんはすでに待っていた。


「お待たせしました」


「ぜんぜん、俺もさっき来たとこ」


< 128 / 231 >

この作品をシェア

pagetop