桜の季節、またふたりで
最寄り駅に着いたら、斉藤さんは右手で私の左手を握った。


竣くんとは、逆なんだな。


妙に冷静に、受けとめてしまった。


「あれ、拒否られるって覚悟してたのに」


「嫌がった方が良かったですか?」


「俺のことを少しは受け入れてくれたんなら、大歓迎」


「彼とくらべてしまって、拒否するのを忘れてました」


手を外そうとしたけど、びくともしない。


竣くんは、身長が180cm超えてたし、仕事柄力強くて男らしい感じで。


斉藤さんは、170cmちょっとで細身だから、こんなに力があると思わなかった。


「好きな子と手をつなぎたいって思うのは、本能だから」


「えっ?」


そのまま、駅近くの公園のベンチまで連れてこられた。


左隣に座った斉藤さんから、あったかい体温を感じる。


このまま、そのあたたかさに頼ってしまいたい衝動にかられてしまった。


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