桜の季節、またふたりで
日数だけがむなしく過ぎていき、いつもの私に戻ることはなかなかできなかった。


自宅に帰っても、何も食べずにお風呂に入って寝るだけだった。


忙しい中、たまに訪ねてくれるカズやまどかがいなかったら、私はどうなっていただろうって思う。


そして今、11月になり、私はやっと普通の生活を送れるようになった。


カズは、キスはしてもそれ以上のことは私に求めなかった。


体重が少しずつ元に戻っていくように、お母さんがいない悲しみも少しずつうすらいでいく気がした。


ひとつ引っかかっているのは、お父さんのことだった。


遺品を整理していく中で、親子3人の写真や、お父さんがお母さん宛に送った荷物の送り状が出てきた。


記憶にないお父さんの顔は、初対面の人のようで何の感情もわかなかった。


だけど、その送り状の住所が、気になった。


いつか竣くんが連れて行ってくれた、海沿いの街だったから。


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