桜の季節、またふたりで
私が大学3年になり、カズは念願の小学校教師になった。


初めての担任は3年生で、毎日遅くまで頑張ってるし、週末も持ち帰り仕事をしていた。


カズが就職したきっかけで、二人暮らしを始めた。


カズはずっと実家暮らしで、私の家からも近いから同棲する必要もないんだけど、仕事が忙しくてなかなか会えなくなるから、朝晩だけでも顔を見たいと説得された。


カズはきっと、一人暮らしの私を心配してるんだと思う。


先月も、同じ県内で連続してストーカー事件があったばかりだし。


私は、お母さんが遺してくれた貯金や保険金が予想以上にあったので、生活に困ることなく勉強に集中していた。


「美春、ただいま」


「おかえり、お疲れさま。


お風呂わいてるよ」


「いつもサンキュー」


カズは、夕飯の支度をしている私を後ろから抱きしめた。


「なあ、風呂出たら、していい?」


「いいよ」


カズは、きっと新しい環境でストレスがあるんだと思う。


私の抱き方が、少し強引になった気がするから。


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