桜の季節、またふたりで
私の21歳の誕生日は、カズが一緒にお祝いしてくれた。


20歳の誕生日は、お母さんが亡くなって間がなくて、お祝いどころではなかった。


「美春に似合うと思うんだけど」


照れながらカズが手渡してくれた小箱には、ピアスが入っていた。


「ありがとう、大切にする」


竣くんは、私の誕生日なんてもう忘れたのかな。


去年も一昨年も、クリスマスイブの朝は竣くんのことを想った。


竣くんが、どこかで無事に誕生日を迎えられているように。


カズとクリスマスを2回過ごしたけれど、竣くんのことをいつも以上に思い出した。


カズに悪いと思ってはいても、竣くんのことを思い出さない日はなかった。


家の鍵を開け閉めするたびにふれるキーホルダー。


竣くんと同じ車。


竣くんが好きなオムライス。


忘れなきゃと思えば思うほど、忘れられない。


カズには言えない、本当の気持ちだった。




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