桜の季節、またふたりで
社会人1年目
卒業旅行も卒業式も終わり、東京に引っ越す準備をすすめていた。


カズも、忙しいのに手伝ってくれた。


まず、カズの荷物を実家へ移動してから、私の荷物を整理した。


私は、会社の入社前研修が始まるまではヒマだから、引っ越し準備は進むはずなのに、懐かしい物が出てくるたびに手が止まり、あまりはかどらなかった。


竣くんと撮った写真や、遊びに行った場所のパンフレットが出てきたから、カズがいなくて良かった。


竣くんは、きっと男らしくなって、モテてるだろうな。


もう27歳だし、結婚してるかもしれない。


あんなに近くにいた竣くんが、今はもう手の届かないところで暮らしている。


いいかげん、認めないといけないのに、踏ん切りがつかない。


大学に合格したら、思い出すのをやめよう。


就職先が決まったら、アドレス帳から消去しよう。


でも結局、何もできないままだった。


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