桜の季節、またふたりで
前もって外しておけば良かった。


カズに外してもらえばいいんだけど、このキーホルダーにはさわられたくないって思ってしまったんだ。


お財布からコインを出して外そうとしている私の手を、カズは両手で包んだ。


「なんで、鍵が2個くっついてんの?」


「えっと、その・・・」


「もしかして、元カレの部屋の鍵?」


何て言えばいいんだろう。


ごまかす理由も思いつかない。


黙ったままの私の顔をのぞきこんで、カズは言った。


「ごめん、わかってて聞いた。


意地悪しちゃったな」


「もしかして、前から気づいてたの?」


「うん、知ってたよ。


たぶん、キーホルダーも大切な物なんだろ」


「・・・ごめんなさい」


「いいんだ、元カレを好きなままでいいって言ったのは俺だから。


だけど、もうそろそろ、俺だけを見てほしい気もするけどな」


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