桜の季節、またふたりで
「神田さん、一人暮らし?」


「うん」


「小沢さんは?」


「私は実家。


もしかして武藤くん、一人暮らしの彼女探してる?」


「まあね、ほら、飲んで遅くなっても行けるし」


「ざんねーん、神田さんは彼氏いるから」


「なんだよ、もう玉砕かよ」


「そういう武藤くんは実家?」


「そ、食事や洗濯のこと考えなくていいし」


「だよねー」


二人とも、話しやすくていい人だ。


部屋に着くと、しんと静まりかえった空間に一人を意識させられる。


私に、仕事なんてできるのかな。


一人には慣れているつもりなのに、竣くんに出会ってから、一人はさみしくてたまらないものになってしまった。


新しい仕事、新しい部屋、新しい人間関係。


不安で押しつぶされそうな今、そばにいてほしいのは、竣くんだった。


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