桜の季節、またふたりで
濡れて帰る覚悟を決めて、家まで15分の道を歩き始めた時。


コンビニの駐車場で、クラクションを鳴らす車がいた。


思わずその車を見たら、


「美春ちゃん、送ってくから乗りなよ」


五十嵐さんが笑っていた。


運転席の開いている窓に近づき、


「だいじょうぶです、家に帰ったらすぐお風呂に入りますから」


断ったけど、


「何言ってんだよ、風邪ひくから乗りな」


例の笑顔で言われて、断れなくなってしまった。


「すみません、お願いします」


「リョーカイ、あっでも、まず拭きな。


このタオル、ちゃんと洗濯してあるから」


フカフカのタオルを渡された。


「お借りします」


「どうぞ」


私が拭き終わるまで、五十嵐さんはしゃべり続けた。


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