桜の季節、またふたりで
そして、4月3日の入社式を迎えた。


本社近くのホテルの会議室で、全社員の前で紹介され、その場で最初の付属先を伝えられた。


私は、よりによって、最も縁のうすい、車関係の雑誌を作っている編集部だった。


武藤くんは、私が一番行きたかった文芸部門。


小沢さんは、女性向けファッション誌の編集部。


「神田さんと代わりたいよ、俺」


「武藤くん、車好きなんだ」


「まあ、体験だから、最終的に自分の希望するところに行ければいいんじゃない?」


入社式のあとの、昼食を兼ねた懇談会で、3人で話していた。


「午後から頑張ろ、ね?」


「うん」


正直、まったく知識も興味もなく、手にとったことすらない車雑誌なんて、何をどう頑張ればいいのかわからないけど。


13時少し前に、所属先の編集部がある3階へ入った。


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