桜の季節、またふたりで
「うん、今日は19時まで」


「そっかー、みんなでカラオケ行こうって言ってて、美春もどうかなって」


「ごめんね」


「いいよ、バイトがんばって」


まどかは、クルッとUターンして、来た道を戻っていく。


男女10人くらいの輪の中に、まどかは吸いこまれていく。


なんとなくそれを見届けると、バイト先のコンビニへ歩き出した。


その時、春特有の強い風が、急に目の前を横切った。


反射的に目を閉じ、体を縮こめる。


風がおさまるのを待って、再び歩き出そうとした時。


「ねえ、これ落としたけど?」


という声が聞こえた。


こういう時、私はすぐに反応しない。


私じゃなかったら、恥ずかしいからだ。


そのまま何事もなかったように歩いた。


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