桜の季節、またふたりで
私は、幸せ者だな。


少し前までは、誕生日なんてありふれた1日でしかなかったのに。


お祝いしてくれる同期がいて、日付が変わった瞬間にメッセージをくれる親友のまどかがいて、今朝モーニングコールで『おめでとう』って言ってくれる竣くんがいる。


お蕎麦屋さんでランチして、天ざるを美海ちゃんと啓太くんにごちそうになり、


「美春、今夜は楽しんできてねー。


今度、詳しく聞かせてよね」


「神田、同期で一番早く結婚しちゃうんじゃねーの?」


ふたりに散々冷やかされた。



そして、その日の夜。


ビルのワンフロア全部がお店で、エレベーターを降りたら一気に高級感ある感じで驚いた。


「いらっしゃいませ、ご予約のお名前をおうかがいいたします」


「えっと・・・五十嵐です」


「かしこまりました、ご案内いたします」


竣くん、もう着いてるんだ。


ドキドキしながら店内へ入った。


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