桜の季節、またふたりで
小さなミスをしながらも、なんとか仕事をこなして、平日は過ぎていき。


誕生日から1週間たって、金曜日になった。


いくらなんでも、プロポーズの返事を待たせ過ぎだと思う。


明日は竣くんに会えるから、自分の正直な気持ちを話すつもりだった。


金曜日の夜、もうあとは眠るだけ、っていう状況で、ふと本棚の1冊が目にとまった。


私が高校生の頃、何度も読んだ恋愛小説だった。


パラパラとページをめくると、何度も読んだはずなのに、細かい描写は忘れてしまっていた。


なんとなく読み進めていると、主人公の女性が彼氏に逆プロポーズする場面になった。



『ずっと一緒にいたいから、結婚してください』


『なんだよ、先に言うなよ。


俺も、おまえとずっと一緒にいたい。


一緒にいられるように、婚姻届出してこよう』



そっか。


結婚って、ずっと一緒にいられる保証みたいなものなんだ。


もしも、仕事の都合で距離的に離れてしまったとしても。


帰る場所があるってことなんだ。


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