桜の季節、またふたりで
「ううん、会社に戻らなきゃいけないから、ごめんね」


「そっか、じゃあ気をつけて帰れよ」


・・・私は、嘘をついた。


本当は、もう夕方だったし、そのまま直帰していいって言われていた。


せっかく行くんだから、資料をもらうだけじゃなくて、なんか情報とってこいとも言われた。


だから、本来なら、お茶して雑談しながら詳しく聞いてみたかった。


だけど、裏へ行ったら、今の女性の顔を見ることになるかもしれない。


それはどうしても、避けたかった。



その日の夜、竣くんは家に戻っても、告白されたことを一言も話さなかった。


次の日も、その次の日も。


私は、新車のことを竣くんに聞くたびに、胸が苦しくなった。


積もり積もった不安は、ふとしたことで爆発した。


竣くんがドラマを観ながら、


「彼女がいるのに告白されるなんてさ、なんか思わせ振りな態度だったんだよな」


って、言った時に、爆発してしまったんだ。


< 222 / 231 >

この作品をシェア

pagetop