桜の季節、またふたりで
五十嵐さんは、正直に話してくれる人なんだと思った。


歩いて15分の道のりは、車だとあっという間で。


家の近くのコインパーキングには、すぐに着いてしまった。


「着いたよ」


五十嵐さんの声で、現実に引き戻される。


「あ、ありがとうございました」


「今度またドライブしような」


今度って、金曜日のこと?


なに着ればいいんだろう。


「美春ちゃん、どうかした?」


「いえ、なんでもありません」


変に期待してることなんて、絶対に知られたくない。


「あ、傘あるから持っていけよ」


「でも、五十嵐さんが困るんじゃないですか?」


「平気、俺は車通勤だし。


気になるなら、早く返しに来いよな。


傘を貸すのも、美春ちゃんと会いたい口実だから」


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