桜の季節、またふたりで
心臓をつかまれたみたいに、ドキッとした。


顔が熱くて、初めての感覚にとまどってしまい、何も言えずにおじきだけして、傘を持って車を出た。


ウィーンと窓ガラスが開く音がして振り向くと、


「美春ちゃん、またね」


笑いながら手をふる五十嵐さんがいた。


「ありがとうございました」


もう一度頭を下げて、アパートへ向かって歩き出した。


車が走っていく音が聞こえたけど、アパートに入る前に振り向いた。


五十嵐さんの車はもういなくて、それが無性にさみしかった。



そしてまた、普段とほとんど変わらない毎日が過ぎてゆく。


だけど少し変わったのは、五十嵐さんと毎日メッセージのやり取りをするようになったことだった。


最初は、何て返事をすればいいのか、言葉づかいはどうしたらいいのか、ものすごく迷って時間がかかった。


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