桜の季節、またふたりで
「美春ちゃんの私服、初めて見た。


似合ってる」


そう言う五十嵐さんの私服も、初めて見た。


コンビニに来る時は作業着だし、雨の日に駐車場で待ってくれてた時は作業着の上着だけ脱いだTシャツだったから。


空の色みたいなキレイなシャツに、チノパン。


「五十嵐さんも、えっと、ステキです」


ほめ言葉が出てこない。


「俺、服装に無頓着でさ。


何を着ればいいのか迷って、結局いつもと変わんない服になった」


「私は、その・・・制服か、バイトの時はTシャツにジーンズがレギパンだし・・・。


今日の服、友達に借りたんです。


ごまかしてごめんなさい」


「いいよ、俺のためにオシャレしようとしてくれたんだろ。


その気持ちだけで、俺はじゅうぶん」


「次からは普段着で来ます」


「あ、次があるんだ、めっちゃ嬉しいんだけど」


・・・しまった。


< 33 / 231 >

この作品をシェア

pagetop