桜の季節、またふたりで
その人は、プリントをひらひらさせながら、


「俺も西高だったんだよ、懐かしいな。


今日は始業式?」


人懐っこい笑顔で話しかけてきた。


「はい」


私は無表情のまま、最低限の返事をした。


「神田美春・・・美春ちゃんか、いい名前」


プリントに押された氏名のハンコを、見られてしまった。


それにしても、この人は何を根拠に『いい名前』なんて言ってるんだろう。


「俺、五十嵐竣(いがらししゅん)。


いま21だから、卒業して3年たつんだよな、早いよな」


そんな遠い目をされても、同意できませんから。


「あの・・・」


「なに、美春ちゃん」


「プリント返していただけますか?」


「あっごめん、急いでる?」


「はい」


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