桜の季節、またふたりで
進路という言葉にたくさんふれる時ではあるけれど、五十嵐さんの口からも聞くと、改めて自分は岐路に立っているんだと意識させられた。


五十嵐さんに、今までの私を知ってもらおうか。


五十嵐さんなら、今までの私も含めて、理解してもらえるだろうか。


「あの・・・少し長くなるけど、時間平気?」


「いいよ、じゃあ俺んち来る?」


五十嵐さんの部屋に誘われたのは、初めてだった。


たぶん、五十嵐さんも、私が大切なことを話そうとしてるって気づいたんだと思った。


「・・・うん、おじゃまします」


車はゆっくりと走り出して、五十嵐さんの住んでるマンションの駐車場に停まった。


「ここの305号室。


オートロックじゃないから、いつでも来いよ」


「そんな、勝手には来ないよ」


「俺が帰ったら、ドアの前で美春ちゃんが待ってるとかさ」


「ストーカーみたいなことしないって」


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