桜の季節、またふたりで
エレベーターを降りて右手へ進むと、305号室の青いドアが見えた。
「ここ」
つないだ手とは反対の右手で指差した先には、『IGARASHI』と表札が出ていた。
「・・・おじゃまします」
玄関の電気が灯ると、こげ茶色のフローリングの廊下があって、お風呂やトイレがあると思われるドアがいくつかあって、リビングへ通された。
テレビとダイニングテーブルがあるだけで、他には何もないシンプルなリビングだった。
「何もなさすぎて驚いただろ」
「ううん、余計な物がないほうがいいと思う。
ぬいぐるみとかあったらどうしようかと思ったけど」
「まあ、テキトーに座って」
飲みかけのアイスティーのペットボトルは、うっすら汗をかいていた。
五十嵐さんは、コーヒーの入ったマグカップを手に向かい合わせで座った。
「明日休みだし、朝までしゃべってもいいぞ」
「そんなにはかからないけど」
私は、ある覚悟を決めて、話し出した。
「ここ」
つないだ手とは反対の右手で指差した先には、『IGARASHI』と表札が出ていた。
「・・・おじゃまします」
玄関の電気が灯ると、こげ茶色のフローリングの廊下があって、お風呂やトイレがあると思われるドアがいくつかあって、リビングへ通された。
テレビとダイニングテーブルがあるだけで、他には何もないシンプルなリビングだった。
「何もなさすぎて驚いただろ」
「ううん、余計な物がないほうがいいと思う。
ぬいぐるみとかあったらどうしようかと思ったけど」
「まあ、テキトーに座って」
飲みかけのアイスティーのペットボトルは、うっすら汗をかいていた。
五十嵐さんは、コーヒーの入ったマグカップを手に向かい合わせで座った。
「明日休みだし、朝までしゃべってもいいぞ」
「そんなにはかからないけど」
私は、ある覚悟を決めて、話し出した。