桜の季節、またふたりで
「私の両親は、私が4歳の時に離婚したの。


父の顔は覚えてないけど、離婚の原因が浮気だから、正直どうでもいい感じ。


母はもともと体が丈夫じゃないし、何か資格があるわけでもなくて、正社員じゃなくてパートでずっと働いてた。


4歳の私を連れて就活するわけにもいかなかったんだと思う。


私は急に幼稚園から保育園へ通うようになって、小学校に入っても学童で、参観も来てくれないし、ずっとさみしかった。


それでも小さい頃は、友達みたいにピアノ習いたいとか、流行ってるオモチャが欲しいとか母にねだったりした。


母は困った顔で黙っていてばかりで、ワガママ言ったら母を困らせるだけだってわかってから、さみしいとか欲しいとか言わなくなった。


学童は3年生で終わりで、私は一人っ子だから4年生からは家に帰っても一人でさみしくて、月曜以外は図書館に行ってた。


図書館が休みの月曜は、児童館に行ってた。


だから私は、本が好きになったんだと思う。


私が中学生になったと同時に、母は時給が高い夜勤のパートを始めて、私は家事を自分でやるようになった。


母は私にひととおりの家事を教えて、『美春がしっかりしてて助かるわ』って言ってくれた。


その頃までは母と会話があったんだけど、中2の夏休みのある日、母が私に『産まなきゃよかったね』って言った」

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