桜の季節、またふたりで
本当は、バイトの時間まで1時間くらいあるから、この先の図書館へ行こうと思っていた。


自宅、高校、バイト先のコンビニ、図書館、スーパー。


高校生になってから、それ以外の場所へ行ったことはほとんどない。


部活もしていないし、すべて徒歩圏内だから、電車もバスもしばらく乗っていない。


「もしかして、これから彼氏とデートとか?」


「違います、バイトです」


「そっかー、何のバイト?」


なれなれしい人だと思った。


そんなことを私に聞いて、何になるっていうんだ。


普段の私なら、プリントを返してもらって無言で立ち去るだろう。


後ろから暴言を吐かれても、そのうちお互い忘れてしまうから。


変なヤツがいた、今日はツイてない、とか嘆いたとしても、一瞬のことだ。


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