桜の季節、またふたりで
だけど、なぜかその日は、自分でもよくわからないうちに、


「この先のコンビニです」


と返事をしてしまった。


返事をしてから、言わなきゃよかったと後悔したけど。


「そっか、だから俺、美春ちゃんとどこかで会った気がしたんだ。


たまにあのコンビニ行くからさ」


そう言うと、私の手にプリントをのせてくれた。


「ありがとうございました」


「俺、ここの整備士やってんだよ。


まあ、美春ちゃんには縁のない場所だろうけど、車乗るようになったら俺に任せとけ」


胸をはる五十嵐さんは、自分の仕事に誇りをもっているようにみえた。


五十嵐さんの後ろには、自動車整備工場があった。


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