桜の季節、またふたりで
キャンドルをテーブルに置いたのは、竣くんだった。


竣くんの家にいるんだし、当たり前なんだけど、少し驚いた。


「美春、ただいま」


「おかえり竣くん、びっくりしたよ」


「ごめん、驚かせようと思ってさ」


ゆらめくキャンドルの炎に照らされて、ケーキのろうそくに火がともってゆく。


「せーの、で消そっか」


「うん」


「せーの」


ふーっと息を吐こうとした私に、竣くんは突然キスをした。


目を丸くした私に竣くんは、


「メリークリスマス」


って、とびっきりの笑顔で言うから、ドキドキして顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。


改めてろうそくの火を消して、ケーキをいったん冷蔵庫にしまってから、ハヤシライスとサラダをテーブルに並べた。


「すげーうまい!」


竣くんは、なんでも喜んで食べてくれるから、すごく嬉しい。


< 61 / 231 >

この作品をシェア

pagetop