桜の季節、またふたりで
4月の初めに桜がヒラヒラと散るのを見た時、一年前に竣くんが話しかけてくれたことを思い出した。


竣くんは、私を明るくしてくれた救世主だ。


出会う前の私だったら、整備工場の社長や奥さんと話すことなんて無理だった。


お母さんに希望を打ち明けることも、三者面談することも、大学を目指すことも無理だった。


早くいい知らせをもって、竣くんを喜ばせたかった。



「美春ちゃん、ここ計算が間違ってる」


「えっ、あっ本当だ、すみません」


「今日はなんかミスが多いな、何かあった?」


斉藤さんに、やんわり指摘された。


「いえ、ちょっといいことがあっただけです」


「もしかして、オトコがらみ?」


「違います」


「つきあうなとは言わないけど、本番はミスが命取りだから、気をつけて」


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