桜の季節、またふたりで
斉藤さんは、竣くんと私が手をつないで歩いているところを偶然見たとわざわざ言ってきたことがあった。


そう言われても、特に何も思わなかったけど、斉藤さんからしたら、受験生なのに何やってるんだとあきれてるのかもしれない。


「大丈夫です、頻繁に会っているわけじゃありませんから」


「ならいいけど。


そうだ、夏休みにある模試だけど、実力みるのに受けたらどう?


有料だけど、自分のランクを確認するためにも、一度受けた方がいいと思うんだよな」


「わかりました、受けます」


「じゃあ、今度までに書類用意しとくから」


「よろしくお願いします」


斉藤さんは、図書館から私の家までいつも送ってくれた。


斉藤さんちと逆方向だから、平気ですって断ったけど、


「夜道で女の子を一人で歩かせるようなことはしないよ」


って、聞いてもらえなかった。


< 73 / 231 >

この作品をシェア

pagetop