桜の季節、またふたりで
そして、誕生日当日。


お泊まりだから大きめのバッグを持って、バイト先へ向かった。


お母さんにはバレバレだろうけど、『友達の家に泊まって、そのままバイトへ行きます』と置き手紙をしておいた。


バイトしながら、竣くんは今ごろ何してるかな、まだ寝てるかも、掃除してるかな、ケーキ買いに行ってるかな、とか想像がふくらんでしまった。


バイトが終わって通用口から出たら、竣くんが待っていてくれて驚いた。


「お疲れ」


「ビックリした、ありがとう」


「ちょっとドライブしようかと思ってさ」


助手席に座ると車は静かに走り出して、最初はふたりでおしゃべりしてたけど、知らない道を走っていることに気づいた。


「竣くん、どこ行くの?」


「ヒミツ、もうすぐ着くけど」


上り坂が終わると、少しひらけた場所があって、車が停まった。


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