桜の季節、またふたりで
「そうなんですか、すみません、変なこと言って。


大学生はおつきあいしてる人がいるのが普通なのかと思ってて」


「美春ちゃん、大学生を何だと思ってるの?」


「受験を乗り越えて、就活まで羽を伸ばすのかと」


「そういう人もいるだろうけど、俺は違うよ」


「もしかして、片想い中ですか?」


私の言葉に、斉藤さんは足を止めて、まっすぐ私を見た。


「そうだよ」


「想いが通じるといいですね」


「今は、ちょっと無理かな」


「そうなんですか。


でも、今は無理でも、いつか通じるかもしれないですし」


「だといいんだけどな」


そう言いながら、斉藤さんは再び歩き始めた。


「今日もありがとうございました」


「来週の模試、がんばれよ」


「はい、おやすみなさい」


「おやすみ」


< 85 / 231 >

この作品をシェア

pagetop