桜の季節、またふたりで
「美春ちゃん、今回の模試がんばったな。


判定結果が楽しみだよ」


「えっ・・・あ、ありがとうございます」


「どうかした?」


「いえ、何でもありません」


「さっきから、携帯ばっかり気にしてる。


彼氏から返事がないってこと?」


「そういうわけじゃないんですけど・・・」


「図星だろ」


返事がこないことなんて、今まで一度もなかった。


竣くんに、何かあったのかも。


「ごめんなさい、お先に失礼します」


立ち上がろうとした私の手首を、斉藤さんはつかんだ。


「行かせたくない、って言ったらどうする?」


「えっ?」


斉藤さん、なんでそんなこと言うの?


「冗談だよ。


じゃあまた来週の火曜日な」


「はい、ありがとうございました。


コーヒー、ごちそうさまでした」


ホームまで走り、電車に飛び乗った。


行きと同じなのに、ものすごく時間がかかっているような気がした。


< 88 / 231 >

この作品をシェア

pagetop