桜の季節、またふたりで
金曜日は普段、バイトを入れていない。


その分、土日は朝から夕方まで働くことが多い。


一人になってしまう土日は、家にいてもすることがないから。


高校を出て、図書館へ向かう途中、例の整備工場の前を通りかかった。


なんとなく、昨日の五十嵐さんがいるかもしれないって思って、チラッと横目で見た。


一瞬見ただけなのに。


五十嵐さんがキャップを逆さまにかぶって作業している姿をとらえてしまった。


・・・こんなの、何でもない。


ただ、顔と名前が一致する人が、視界に入っただけ。


すぐに視線をそらし、図書館へ向かった。


図書館で朝刊を読んでから、好きな作家の本を手にとって読み始めたものの、五十嵐さんの姿がチラついて集中できない。


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