桜の季節、またふたりで
竣くんは黙ったままで、私を見てくれない。


「竣くんを傷つけたことは謝る。


ごめんなさい。


でも、斉藤さんには勉強を教えてもらってるだけだし、誤解されるようなことは何もないよ」


「なんで美春は、俺とつきあってんの?


大学も出てない俺で、本当にいいわけ?」


「竣くんはいつだって優しくて、嘘をつかなくて、私のことを支えてくれるから、好きになったんだよ。


どんどん好きになって困るくらいなのに、なんでそんなこと言うの?」


言いながら、涙があふれてきた。


竣くんはすぐ目の前にいるのに、ものすごく遠く感じた。


「ごめんね、今日は帰る」


花火大会、一緒に行きたかった。


今日をすごく、楽しみにしてたのに。


明日の朝まで、ずっと一緒にいられるのも、楽しみにしてたのに。





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