桜の季節、またふたりで
部屋を出ようとしたら、竣くんは追いかけてきてくれるんじゃないかって、どこかで期待してた。


でも、部屋を出ても、竣くんは来なかった。


冷たいドアノブをもう一度開けて、竣くんの胸に飛びこみたかった。


だけど、足がすくんで動けなくなってしまった。


これって、初めてのケンカになるのかな。



マンションのエントランスで、まどかに花火大会へ行けなくなった理由を電話した。


『そっか、誤解されちゃったんだね。


美春、まだ五十嵐さんちの近くにいるの?


いるなら、五十嵐さんのところへ戻りな。


花火大会は、気にしなくていいから。


五十嵐さんも、美春が戻ってきてくれるのを待ってると思うよ。


きっと、年上なのにヤキモチ焼いて、恥ずかしいんだよ。


大好きアピールしてきて、それでもダメなら今日は帰って、少しお互い冷静になってから仲直りしたら?』

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