闇喰いに魔法のキス《番外編》
*元カレ以上恋人未満《ミラside》
タリズマン。
それは、“闇”と呼ばれる悪事を働く魔法使いから国の平和を守る、警察組織。
強い魔力と実力を持つ魔法使いが筆記と実技の試験を受け、ようやく隊員となれる、超難関の公務員。
“あいつ”出会ったのはそう。
私が、駆け出しのタリズマン隊員だった頃。
四年の魔法学校を終えようやく隊員となった私は、任務を任されて、慣れない闇との戦いに身体中が筋肉痛で…
覚えなくてはならない多くの資料や作業に頭がパンクしそうで…
とにかく勤務後は、どっ!と押し寄せた疲れに押し潰されそうになっていた。
…もう少し上司がしっかりしてくれれば、私が尻拭いに回らなくて済むのに。
まぁ、誰とは言わないけど。
声のやたらでかい、楽観的、短絡的思考の大柄男め。
…だけど、実力のある上司を尊敬しているのも確かだ。
少しでも追いつけるように、明日も仕事頑張ろう。
私は、ヒールを鳴らして裏道へ入り、とある隠れ家的レストランに向かう。
そこは豪華で新鮮な料理に加え、お酒が美味しい。
デザートの種類も豊富で、しかも値段がリーズナブル。
本部から近いということもあり、私は週末の仕事帰りに通うようになっていた。
あぁ、疲れた。
私は今日、鶏肉のメイン料理とスープお代わり自由、サラダとデザート付きの“金曜限定特別メニュー”を食べるために仕事を終わらせてきたんだ。
レストランに到着し、期待を胸に
カラン、と店の扉を開ける。
そして一秒後、目の前の光景に足が止まった
うそ…
満席……?!
いつもは閉店一時間前を切ったこの時間、お客はあまりいないはずだが
なぜか今日は満席だった。
「あの、待ち時間はどのくらいですか。」
店員に尋ねると、彼は腕時計と店内を交互に見ながら答えた。
「三十分ほどですね。」
!!!
三十分…?!
私は、その言葉に静かにショックを受けた。
待ったとしても、メニューを注文して料理が運ばれてくるのに十分はかかる。
金曜限定特別メニューとお酒をゆっくり味わう至福のひと時は、閉店までの時間から逆算して十五分弱しかない。
…そんな。
昨日、残業をすべて終わらせて
上司に奢ってもらえる飲みの誘いも断って来たのに。
はぁ……。
私は、心の中でため息をつきながら店員に伝えた。
「では、また日を改めます。」