闇喰いに魔法のキス《番外編》
「…食わないのか?冷めるぞ。」
「!た…食べます。」
私は彼の言葉に、はっ!と我に返って料理を口に運ぶ。
…おいしい。
食べ物を口にした瞬間
青年に対する考えや、体に溜まっていた疲れが吹っ飛んだ。
青年は、くすくすと笑いながら口を開く。
「幸せそうな顔だな。肉、好きなのか?」
!
私は、ぐっ!と肉を喉に詰まらせる。
水で一気に押し流すと、ちらり、と青年を見ながら答えた。
「そんな顔してましたか?…肉は好きですけど……。」
「あぁ。表情はあまり変わらないが、あんたの思っていることはすごく伝わってくるぞ。」
…。
それは、今まで誰にも言われたことのない言葉だった。
昔から、感情を表に出し、はしゃいだりするのがどうも苦手で
言葉や態度に出せない“自分”を言い当てられたのは初めてだ。
…この“情報屋”にだからこそ悟られるのかもしれないけど…。
私は、警戒しながら口を開いた。
「情報屋さん。
あなたが何を聞いても、私はタリズマンの情報は喋りませんから。」
「!」
青年は、小さく目を見開いた。
…この人、私から“組織の裏情報”を聞き出すつもりかもしれない。
またこの人のペースに乗せられたら終わりだ
すると、青年はグラスをテーブルに置き、私に言った。
「…警戒してる?どうして俺があんたを探ってると思うんだ?」
私は、真剣な表情になった彼を見つめて答える。
「…あなたは、話し相手を“情報源”としか見ていないような気がして。」
目の前の彼は、私の言葉を聞いて
初めて大きく驚いた顔を見せた。
そして、ふっ、と笑みをこぼす。
その時、今まで一線を引いていた彼の仮面が剥がれたような気がした。
「確かに、そういう見方をすることが多いが……あんたは違う。」
「え…?」