闇喰いに魔法のキス《番外編》
再び、俺とルミナの声が重なった。
しかし、さっきの驚きの声とは違う。
ルミナがロディに向かって尋ねた。
「“酔った”?お酒に強いロディが…?」
「…つい気が緩んで飲み過ぎてな。
ミラと飲むと、酔いが回りやすいんだ。」
俺は、目を細めながらロディに尋ねる。
「…い、“色々あって”って、ミラさんと一体何があったんだよ?」
すると、俺の言葉を聞いたルミナが
どきり、とした顔をしてロディを見つめた。
…五つ歳が離れている分、ロディは大人だ。
きっと、反撃されて殺されかけたってことは
こいつ、ミラさんに手ぇ出したな。
まぁ、“訳あり”で“元恋人”とかいう大人な世界は俺には分からないけど
嫌いになって別れたわけじゃないみたいだし
すると、ロディは微かにまつ毛を伏せて小さく答えた。
「まぁ、レイと嬢ちゃんの想像に任せるよ。
多分、大体、それで合ってるから。」
深くは語ろうとしないロディに、俺は眉をひそめて言った。
「…み、ミラさんには謝ったのかよ?」
するとロディは、ふっ、と笑って俺に答えた。
「いや、“私の半径三千キロ以内に近づくな”って言われたから
当分、ミラには話しかけられないんだ。」
「いや、お前それ、サンクヘレナにいられないじゃねーか。」
“半径三千キロ”って。
本当、何したんだコイツ。
「あぁ。どうやら、俺は“国外追放”らしい」
そう言って流すように、ふっと笑うロディに
俺は慰めのココアをジョッキで差し出したのだった。